・・・つまり、その戦争は、主として、封建的専制主義及び外国の支配拘束を取り除くことであった。それは進歩的戦争であった。又、イギリスに対して若し××が戦争を始めるとしたら、それは正当な、必要な戦争である。抑圧者、搾取者に対する、被圧迫階級の戦争には・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・自然主義文学が、資本主義的生産関係を反映し、あるがまゝに現実を描こうと企図したのに対して、この写生派、余裕派、低徊派等は支配階級の中に根強く巣喰っている封建主義を多分に反映して逃避的唯美的傾向に走っていた。それが、この派をして、社会的現実と・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・考えてみると、これこそ陰惨な封建思想の露出である。 むかしも、あんなことをやった奴があって、それは権勢慾、或いは人気とりの軽業に過ぎないのであって、言わせておいて黙っているうちに、自滅するものだ、太宰も、もうこれでおしまいか、忠告せざる・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・保守と封建。インフレーション。政治と経済。闇。国民相互の信頼。道徳。文化。デモクラシー。議会。選挙権。愛。師弟。ヨイコ。良心。学問。勉強と農耕。海の幸。」等である。幕あく。舞台しばらく空虚。突然、荒い足音がして、・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・海外の学界でもやはり国際的封建的の感情があり、またいろいろな学閥があるので、ことに東洋人の独自の研究などはなかなか目をつけないのであるが、しかしたとえ東洋人のでもそれがほんとうにいいものでさえあれば、ついにはそれを認めるということにならない・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・山脈や河流の交錯によって細かく区分された地形的単位ごとに小都市の萌芽が発達し、それが後日封建時代の割拠の基礎を作ったであろう。このような地形は漂泊的な民族的習性には適せず、むしろ民族を土着させる傾向をもつと思われる。そうして土着した住民は、・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・しかし今になって考えてみるとそのおかげでかえって自分の頭の中には父の言葉で描かれた封建時代の捕鯨の光景がかなり鮮明な影像となって四十年後の今日もまだ保存されているのである。 室津の宿屋の主人はかなりのお婆さんであったが、われわれ二人の中・・・ 寺田寅彦 「初旅」
・・・北斎漫画を見る時に封建時代の社会の不思議な心理を教えられる。ホガースやドーミエーからは享楽の影に潜む恐ろしさを味わわされる。ハインリヒ・クライの怪奇画からは文明の背後に隠れた災厄の悪魔の呼吸を感じさせられる。バンベリーの「新兵」の絵を見てい・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
・・・五十歳前、徳川三百年の封建社会をただ一簸りに推流して日本を打って一丸とした世界の大潮流は、倦まず息まず澎湃として流れている。それは人類が一にならんとする傾向である。四海同胞の理想を実現せんとする人類の心である。今日の世界はある意味において五・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・現に封建時代の平民と云うものが、どのくらい長い間一種の型の中に窮屈に身を縮めて、辛抱しつつ、これは自分の天性に合った型だと認めておったか知れません。仏蘭西の革命の時に、バステユと云う牢屋を打壊して中から罪人を引出してやったら、喜こぶと思いの・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
出典:青空文庫