・・・近代の歴史の担当者として現れたブルジョアジーは、王権を否定して市民の権利を確立すると共に、ルーテルを先頭に立てて、法王に統率され経済的政治的に専制勢力の柱である天主教の仕組を否定した。そして、市民一人一人の精神の内に在る神としてのキリスト教・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・一層我々に納得されにくい独裁専制政治と宗教についての暴圧的政治論等々、読者は決してすらりとこの一篇の小説を読み終せることは許されない。種々の抵抗にぶつかり、小道へまで引きまわされ、脂のきつい文章の放散する匂いに揉まれ、而もそれらのごたごたし・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ 家長専制の当時のロシアの上流中流社会で、娘が親を矯正することは不可能だった。 ソーニア・コレフスカヤのように、勇敢なインテリゲンツィアの若い婦人たちは、医学を勉強しようとして、科学を勉強するためにさえ家出しなければならなかった。家・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・土地問題と現在あるがごとき形で今日われわれに残されている封建的絶対主義との闘いにあり、広汎な層をふくみ専制支配に対するあらゆる不満を組織して行われる民主主義獲得のための闘争は、究極の目標としてプロレタリア革命への急速な転向をもつのみである。・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・「文化の再生には、必ず憑かれたもの、狂信者、専制者を必要とする」と断言されるに至って、人々は一陣の無気味な風を肌に感ぜざるを得ないのである。 何と解するかの問題 同じ「文芸批評の行方」という『中央公論』の論文の・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・しかしながら、二百五十年間に亙ってロシアの大衆の生活を縛りつけていた封建性は実に深く日常の習慣に滲みこんで、家庭内における父親の専横、主人と雇人との関係の専制的なことは、恐ろしいばかりであった。ゴーリキイの祖父の家の生活は、その息づまるよう・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ マクシム・ゴーリキイが五つで父に死なれて後、引取られて育った祖父の家の生活は、無知と野蛮と、家長の専制とで、恐るべく苦しいものであった。農奴解放は行われたが、その頃のニージュニ・ノヴゴロドの下層小市民の日常生活の中心では、まだ子供を樺・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・アレキサンダア二世が欺瞞的な農奴解放を行い、ゴーリキイが生れた時分、もう農奴制そのものは廃止されていたけれども、二百五十年にわたったロシアの農奴制によってしみこんだ封建制は、家庭の内に信じられない父の専制、主人と雇人との間の専制主義となって・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・そして、その感情生活も性格から来る不羈奔放さとともに、専制的な君主らしく一人よがりで気ままであったこと、伝説化されている淀君のような存在もあり、一方には千利休の娘に対する醜聞なども伝えられている。 当時の社会では、征服した者が権力を以て・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・民主の社会という場合には、少くとも人権が確立し婦人の社会的地位の差別がとりのぞかれ、人種偏見から解放され、言論、出版、政治活動の自由のある社会を意味している。専制と封建の権力、習慣がとりのぞかれた社会、或は、それらの過去の鎖をすてようとする・・・ 宮本百合子 「われらの小さな“婦人民主”」
出典:青空文庫