・・・ 先ず経済的に独立しなければ、男子の専横から遁れることができない。こう知った女は職業をこの社会に向って要求したのである。 社会は、それらの女子に職業を与えたであろうか。今日、多くの職業婦人の出現は、たしかに与えられつゝあることを証す・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・小鳥を飼う等と云う長閑そうなことが、案外不自然な、一方のみの専横を許して居るのではなかろうか。 此等の愛らしい無邪気な鳥どもが、若し私達が餌を忘れれば飢えて死ななければならない運命に置かれて居ると知るのは、いい心持でなかった。 飼わ・・・ 宮本百合子 「餌」
・・・無知、野蛮な専横ぶりを軽蔑した。だけれども、誰にだってその無茶苦茶ぶりがわかりきっている横柄ずくなやりかたに、いまさら楯つくのは大人気ない、という感情は、あのころの日本の一般的な気持であった。どうせあっちは暴力で来ている、馬鹿と気狂いの対手・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・その前年、ツルゲーネフに少年時代から沁々農奴生活の悲惨を感じさせた専横な女地主である母親が、外国で日を暮しているツルゲーネフに立腹して送金を拒絶した時、彼を助けて金を出してやったのは、ヴィアルドオ夫人である。 ヴィアルドオ夫人の美と才能・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・さて、ジョン・ハーシーは、マーヴィン将軍の専横によってアダノから追放されたのちのジョボロ少佐の生きかたを明日の作品によってどのように追究してゆくだろうか。「撓まぬ人間の行動」として世界の真実を語ろうとするジャーナリストの仕事を、どう展開して・・・ 宮本百合子 「「ヒロシマ」と「アダノの鐘」について」
・・・日本のすべての心に戦争の恐怖があり、ファシズムの専横と独裁への嫌悪がある。国際事情にふれる機会が少ない上、まだイエスとノーをはっきり区別して社会的発言をする習慣がゆきわたってしまわないうちに、この戦争とファシズム独裁に対する人民の嫌悪感を逆・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・しかしながら、二百五十年間に亙ってロシアの大衆の生活を縛りつけていた封建性は実に深く日常の習慣に滲みこんで、家庭内における父親の専横、主人と雇人との関係の専制的なことは、恐ろしいばかりであった。ゴーリキイの祖父の家の生活は、その息づまるよう・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・藤原氏専横の当時、中流の女性が、父親の家にあって経済的な基礎もなく社会的背景も権利も無いままに、どんな不安な身のゆく末を思い煩わなければならなかったか、又そこから脱出しようとして、それぞれの才智に応じて、いろいろと進歩の機会を捉える工面をし・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫