つい先頃、或る友人があることの記念として私に小堀杏奴さんの「晩年の父」とほかにもう一冊の本をくれた。「晩年の父」はその夜のうちに読み終った。晩年の鴎外が馬にのって、白山への通りを行く朝、私は女学生で、彼の顔にふくまれている・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・当時、山川派としてのこったのが前田河広一郎、彼の代作者里村欣三・葉山嘉樹・岩藤雪夫等及び今度脱退した黒島伝次・平林たい・小堀甚二等だ。「国際局は戦争の危険に対してソヴェト同盟を××というスローガンの下に、すべての××的読者を糾合する大き・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
森鴎外には、何人かの子供さんたちのうちに二人のお嬢さんがあった。茉莉と杏奴というそれぞれ独特の女らしい美しい名を父上から貰っておられる。杏奴さんは小堀杏奴として、いわば自分の咲き出ている庭の垣の彼方を知らないことに何の不安・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
出典:青空文庫