・・・その小成に安んずるをおそるるなり。今君は弱冠にして奇功多し。願わくは他日忸れて初心を忘るるなかれ。余初めて書を刊して、またいささか戒むるところあり。今や迂拙の文を録し、恬然として愧ずることなし。警戒近きにあり。請う君これを識れと。君笑って諾・・・ 田口卯吉 「将来の日本」
・・・この言葉の中には欧米学界の優越に対する正当なる認識と尊敬を含むと同時に、我国における独創的の研究の鼓吹、小成に安んぜんとする恐れのある少壮学者への警告を含んでいたのである。「どうも日本人はだめだ」と口癖のように言っていた、その言葉の裏にもや・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・ 痛快なのは、ソヴェト同盟の生産拡張五ヵ年計画がはじまるまで、狡いことして儲けていた小成金や商人が、三十ルーブリの室なら九十ルーブリという風に、いつもキット三倍の税をかけられていたことだ。家賃が三倍になるばかりじゃない。電燈料もガス代も・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
出典:青空文庫