・・・強請して小規模で分散的な副業に止めておこうとする理由は「集団作業の心理状態には被傭人の気持が多く、共同作業場あるいは家庭工業には農業精神が横溢している」とされているのである。 これまでも、日本の女は、実に労を惜しまず、雑多な歴史の荷・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・大分県は私の見ただけのところでは小規模にちんまり安住しすぎ、鹿児島は明るく、人の気質が篤く覇気はあるらしいが、既成の或るものがある。日向にだけは、男神が甦生しても大して意外でない悠々さがある。 熊本は、寝て素通りしたから何も知らず、長崎・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・当時大逆事件と呼ばれたテロリストのまったく小規模な天皇制への反抗があらわれ、幸徳秋水などが死刑に処せられた。自由民権を、欽定憲法によってそらした権力は、この一つの小規模な、未熟な、社会主義思想のあらわれを、できるだけおそろしく、できるだけ悪・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 一、以上に述べたような経済事情の悪化は、小規模な出版業者の没落と、没落しまいとするもがきから一層粗悪なエロ・グロ出版を行わせる結果になった。日本出版協会は、日本民主化のために有益な出版を鼓舞しようとするたてまえから、さる六月エロ・・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・文学そのものが客観的現実に対する眼光の確かな洞察力を失い、創造力の豊かな社会的地盤を失った時、よりイージーで小規模な人生と芸術への主観的角度をもつ随筆の流行を見るのであるから、この意味で科学者の無方向な随筆活動への参加は二重の力で文化を下り・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 今日の図書館員の目から見れば、此那大ざっぱな、まとまりのない目録は稚拙の極で、小規模の箇人蒐集をまとめる役にも立たないように思えるに違いない。けれども、私にこの部門の配列の順序その他は、何となく分業以前の人間の暖さ、正直さ、真実さのほ・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・社会というものの上にある一つの小規模な連帯責任を有っている団体、そういう家庭で、おやじの身になっても、自分が死んでも社会が子供を保護してくれるという安心のある方が随分安全である。本当に安心して生産に従える。 また生活の安定ということに対・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・図書館は小規模の博物館を兼ねているのだ。豊富な資料を各箇人が持ち合わせながら、組織立った博物館にして見る気にならない長崎人の心持も、私は興味を以て感じた。ざっと見ただけだが、その気分を、集成館によって代表された薩摩人の気質と比べると感興深い・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・三宅やす子の『ウーマンカレント』を中心とし小規模の救援事業をした。野上彌生子とこれらの数年間に知る。一九二四年春ごろから少し書くことができるようになった。「心の河」「イタリアの古陶」等。湯浅芳子を知る。夏・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・日本の民主化が巧妙に内外のファシズム勢力の増殖にすりかえられてゆく過程を注視すると、便乗というものの最悪の典型がそこに発見される。日本の小規模な独占資本は、より強大な国外の独占資本の利益追及に便乗してそのおかげで存続しつづけることに決心して・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
出典:青空文庫