・・・ だから、捲上の線は余分な土や岩石を掘り取らないように、四十五度以上にも峻嶮に、川上と川下とから穴の中に辷り込んでいた。そして、それはトロッコの線路以上に広くは幅を取ってなかった。 これ等の事は、設計の掘鑿通り以外に、決して会社が金・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・の人はまたていねいに礼をして目で三郎に合図すると、自分は玄関のほうへまわって外へ出て待っていますと、三郎はみんなの見ている中を目をりんとはってだまって昇降口から出て行って追いつき、二人は運動場を通って川下のほうへ歩いて行きました。 運動・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・ 二人はりんごを大切にポケットにしまいました。 川下の向う岸に青く茂った大きな林が見え、その枝には熟してまっ赤に光る円い実がいっぱい、その林のまん中に高い高い三角標が立って、森の中からはオーケストラベルやジロフォンにまじって何とも云・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・嘉吉はすぐ川下に見える鉱山の方を見た。鉱山も今日はひっそりして鉄索もうごいていず青ぞらにうすくけむっていた。嘉吉はせいせいしてそれでもまだどこかに溶けない熱いかたまりがあるように思いながら小屋へ帰って来た。嘉吉は鉱山の坑木の係りではもう頭株・・・ 宮沢賢治 「十六日」
出典:青空文庫