・・・その席上で幣原首相は、私も自分の利益のために粘っているのではない、国を憂えることは諸君と同じだが、方法が違う、と意見を披瀝しはじめたら、傍から楢橋書記翰長が、なお言をつごうとする首相に「『ストップ』と命じ、首相にこれ以上の発言を許さなかった・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ 日比谷の放送討論会などの席上では、大変賑やかに食糧事情対策が論ぜられます。野草のたべかたについての講義――云いかえれば、私たち日本の人間が、どうしたらもっと山羊に近くなるか、とでも云うようなお話まで堂々とされます。これは公の席で、・・・ 宮本百合子 「公のことと私のこと」
・・・ ただ、余程以前、何かの講演会の席上で、つい目の前に、博士の精力的な、快活な丸い風貌に接した以外は、文学を通してだけの知己でありました。 私の周囲にそのくらいの深度の記憶を持った人々は多くあると思います。その中から、幾人ずつか一年の・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・第十六回党大会の席上、ラップの代表者ベズィメンスキーは、文学も生産経済計画以外のプランはもっていないと言った。別の言葉で云えば、社会主義の達成は同時に文学の課題であるということである。映画は毎年大体定められた生産計画によって生産されている。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・その席上で、支配階級のファッショ化、帝国主義戦争とたたかうプロレタリア・農民の闘争の具体的一部としての国際婦人デーの意義、ソヴェト同盟をわれわれは何故支持するかということも、われわれの日常の闘争と結びつけて説明されなければならぬ。一人一人の・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・婦人の幸福は家庭にあり、家庭において婦人が婦徳を全うすることこそ日本文化の世界に誇るべき輝きであると論じ、婦人参政権運動の市川房枝女史も座談会の席上でもとの婦選運動は男性に対して行われたような点がなくはなかったが、この頃は婦人の特徴をよく理・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・ウォール街の実業家たちと宴会の席上で終始一貫反ユダヤ熱をあげて、プロテスタント機関紙『チャーチマン』に警告されている。また、アメリカ聖教会機関紙『ウイットネス』は、MRAの労資協調論を批評して「美くしい宗教言辞のかげでMRAはなぜ世界最大の・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ 民主的出版物の編集が、ひとり合点で、不馴れであるし拙劣である上に、第三者に真の努力を感じさせるだけの迫力を欠いているということは、出版文化委員会の席上で、しばしば発言されたことであった。出版の仕事は客観的な現実のうちにさらされている事・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・ この座談会の席上で、島木氏や徳永氏によってプロレタリア文学作品の一つの発展的タイプとして「プロレタリア的な単純な明朗性を持った作品」「単純な、明快な言葉で判りよく、しかも芸術的な」作品が翹望されている。そのような作品に対する評価の点で・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ある時是真は息と多勢の門人とを連れて吉原に往き、俄を見せた。席上には酒肴を取り寄せ、門人等に馳走した。然るに門人中坐容を崩すものがあったのを見て、大喝して叱した。遊所に足を容るることをば嫌わず、物に拘らぬ人で、その中に謹厳な処があった。」・・・ 森鴎外 「細木香以」
出典:青空文庫