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・・・九 青い大麦や、小麦や、裸麦が、村一面にすく/\とのびていた。帰来した燕は、その麦の上を、青葉に腹をすらんばかりに低く飛び交うた。 測量をする技師の一と組は、巻尺と、赤と白のペンキを交互に塗ったボンデンや、測量機等を携え・・・
黒島伝治
「浮動する地価」
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・・・をかかしめた、パリ帰来後の孤愁と象徴派との別離。結婚生活の重荷が反映している「背徳者」、それから六年間も間をとんで執筆された「狭き門」、三十歳のジイドの苦悩は、日夜自分の極めて知識人風な内的生活の探求の裡に棲んで、「汝は何ものかに役立たんと・・・
宮本百合子
「ジイドとそのソヴェト旅行記」