・・・それでその後英語も大分教えて年功を積みましたが、速水君に断りますが、その後発達した今日の私の英語の力でも、あのバークの論文はやはり解らない。嘘だと思うなら速水君があれを教えて御覧になれば直ぐ分る。――こんな下らない事を言って時間ばかり経って・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・ヘッ罪作りな……第一の精霊 若い人がござるは、年功でもない、一寸はつつしまねばならぬワイ。なんぼ春だと云うて御主のはげはやっぱりかがやいてあるのに、口元に関所を置いてとび出すならずものは遠慮なくからめとる様に手はずをなされ――そう思わぬ・・・ 宮本百合子 「葦笛(一幕)」
・・・ 主人は、本やというよりもむしろ呉服屋の年功経た番頭というような云いかたで、新刊本の棚の前に、一冊の本を半分投げてよこした。十八年度最終の出版整備が公表されて程なくのことである。 今日の本やの気分というものを犇と感じつつ見ると「青眉・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・京都や奈良が、決して自分の年功を忘れない老人のようなのと、興味ある対照と思う。 午後になっても、Y切なく、外出覚つかない。番頭、頼山陽の書など見せてくれる。折々、港の景色をぼやかして、霧雨がする。お喋りの間に、長崎の女性評が出た。「・・・ 宮本百合子 「長崎の一瞥」
・・・彼らに内在するあらゆる自然発生的中流的素質は、老大国の首府に暮すうち数等政治的年功を積み、実利主義によってきたえられたイギリス中流的秩序によって言語とともに整理される。英国人の他人種に馴れる馴れ方はフランス人の馴れ方と違う。英国人が或他人種・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫