・・・ ことしの大晦日は、どの友達のところもほとんど皆夫婦そろっているから、私は私のいないことで誰も寂しがらせないから、何年ぶりかで父とお年越しをしようかと云っているところです。お正月七日がすぎたらお目にかかりにでかけます。この頃、もうお弁当・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・芝居とか、キノとか、音楽とか、一家揃ってそこへ行って、暖い、明るい、楽しい年越しするわけさ。 ――ねえ、オイ! ソヴェトの労働者っていうと、その話だけでも、どうも偉くがっしりしてやがるみたいだが、そいでもいつかヘベレケになることもあるの・・・ 宮本百合子 「正月とソヴェト勤労婦人」
・・・暮を知らない様に静かな此村で、年越しをするのもおだやかで好いだろう等と思う。 町へ雑誌と、書く紙を買いに行こうと思いながら、寒さにめげて一日一日とのばして居たが、歳暮売出しを町の店々は始め、少しは目先が変って居るからと云う事で、芝居ずき・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫