・・・特に高崎郡領一揆と大久保利通にその例を見る維新の封建地主勢力の庇護のもとにあった志士団と革命的農民との敵対関係へ、われわれの注意を向けている点は見落すことのできないことである。 明治維新を「その被圧迫階級の立場から描くことこそマルクス・・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・をよめば、良人に全生活を庇護されてゆくように、その幸福を飾る花であることを目的としたまとまりないいわゆる淑女の教養きり身につけていない善良で気品ある女が、いったん逆境に陥って燃える母の心から終に馬車のわだちの下で命をおとす悲劇を、自分の妻に・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・その広大な財力による庇護の腕の中でジャーシャの独立心も可愛らしく書かれている。「孤児マリイ」とこのジャーシャを読みくらべてみると、ウエブスターのように不幸の解決が慈善でできると信じていた社会層の婦人作家の世の中の見かたと、オオドゥウの人・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・一つは自分がこれまで兄の庇護のもとに立っていながら、それを悟らなかったということである。今一つは、驚くべし、兄と自分とに渾名がついていて、醜い自分が猿と言われると同時に、兄までが猿引きと言われているということである。仲平はこの発明を胸に蔵め・・・ 森鴎外 「安井夫人」
・・・『桜の実の熟する時』や『春』などで見ると、藤村はその少年時代や青年時代を他人の庇護のもとに送り、その年ごろに普通のわがままをほとんど発揮することができなかったのである。それに加えておのれの生家のいろいろな不幸をも早くから経験しなくてはならな・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫