・・・左官屋といっても、ドイツではただ壁をぬるばかりが仕事ではなくて、煉瓦を積んで家を建てる仕事や、その家々の装飾の浮彫石膏細工をつくるという風な美術的技量のいることも、やはり左官の職分にこめていたものらしく思われる。 カールのそのようなはっ・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・それで江井も大いに頭をしぼり、向島の西村の土地のがら空きのところへアパートを建てることになり、それで江井の安定の手段とすることになりました。私はやっと肩の重荷をおろしました。何しろ、こういう話、スエ子の話、皆、百合子様、お姉様なのです。この・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・何処かで人間らしいあったかい人づきあいを欠いて、やっとこさと金を溜めて、どうやら家を建てるより子供の教育だ、立派な子孫を残すために、小さい碌でもない財産を置くより子供の体にかけようと熱心に貯金していたら、それがどうでしょう、このごろは金の値・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・月賦で家を建てる方法。そんな風な経済記事が扱われ、政治にしろ、そのときの大臣連の出世物語、政界内幕話という工合であった。戦争がはじまったとき、すべての浪花節、すべての映画、すべての流行唄、いわゆる大衆娯楽の全部が戦争宣伝に動員された。大衆文・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・天幕を建てる場所は海でも山でも、その土地の所有者に断れば殆ど自由ですから、毎年変った土地へ、思うさまに行くことが出来るわけです。 日本ではまさか女ばかりでそんなことも出来ますまいが、罐詰にバタその他必要な程度のものの入った小さなバスケッ・・・ 宮本百合子 「女学生だけの天幕生活」
・・・ 育児教育の方を見れば、一例としては新しい住宅建築共同組合で建てる建物の中には付属托児所を造るのを理想としてやっている。それでそういうものは最近非常に多くなって、多いところになると区の中にいくつもある。また工場では工場が托児所をもってい・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ 小屋を移すと云っても只オイソレとするのではなく、水排けがどう云う風になってるかの、光線の射入が完全に出来てなく風の強くあたる処はいけないのと云って、到々自分共の遊び場になって居る広っぱの隅に建てる事になった。 植木屋を呼んで、朝早・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・○隣の大工仕事、 こわした家、新しく建てる家 六月二十五日から林町に来る スーラーブ進む 七月七日 妙に寒い日 腸をこわす、下痢疲れ。仕事出来ず 七月八日 朝食堂にゆく 有島氏の死 四十六・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(二)」
・・・ お霜は何か考えているらしく黙っていたが、「お前、小屋建てるなら組で建てて貰うまいか?」と云い出した。「組が建ててくれりゃ結構やけどなア。」「そりゃ建てるわさ。いっぺん組長さんに相談してみよまいか?」「どうなと勝手にせ!・・・ 横光利一 「南北」
・・・彼はそういう住居を建てる資力を持っているかもしれない、しかしそれは彼自身が自分の仕事から得た資力ではないであろう、それならば彼は世間の手前そういう家に住むのを恥ずべきである。そう藤村は考えたのであろう。美しい住居そのものが無意義なのではない・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫