・・・けれども、「和平建国」というロマンチシズムには、やっぱり胸が躍ります。日本には、戦争を主として描写する作家も居りますけれど、また、戦争は、さっぱり書けず、平和の人の姿だけを書きつづけている作家もあります。きのう永井荷風という日本の老大家の小・・・ 太宰治 「三月三十日」
・・・この現象はわが国建国以来おそらく現代とほぼ同様な頻度をもって繰り返されて来たものであろう。日本書紀第十六巻に記録された、太子が鮪という男に与えた歌にも「ない」が現われており、またその二十九巻には天武天皇のみ代における土佐国大地震とそれに伴な・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・買いためなどの出来るのは資本家地主であり、戦争とそのために起った物価騰貴で儲けるのは即ち彼等であることを『キング』の記事は露骨に告げているのである。建国祭が近づくが、日本の専制的な支配権力が大衆を無知と無気力におくためにはどういうものを読ま・・・ 宮本百合子 「『キング』で得をするのは誰か」
本年の建国祭を期して文化勲章というものが制定された。これは人も知る如く日本で始めてのことである。早速絵では竹内栖鳳や横山大観がその文化勲章を授与され、科学方面でも本多博士その他が比較的困難なく選ばれた。文学の分野に於ては、・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・ 文芸懇話会が、文学の隆盛のための組織としてはそれ自身矛盾を包んでいることは既に明らかにされたのであったが、一九三七年という年は、更に建国祭を期して文化勲章が制定せられ、帝国芸術院というものが設立され、文芸懇話会は創立四年目に発展的解消・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・が、たとい稚拙であるにもしろ、その想像力が、一方でわが国の古い神話や建国伝説などを形成しつつあった時に、他方ではこの埴輪の人物や動物や鳥などを作っていたのである。言葉による物語と、形象による表現とは、かなり異なってもいるが、しかしそれが同じ・・・ 和辻哲郎 「人物埴輪の眼」
出典:青空文庫