・・・書中の認識や、引例等にも、多少の改変を要するものあるは勿論であります。こうした批評眼を有しないものならば、また、読書子の資格のなきものです。 雑誌に載った時は、読みたいとも思わなかったのが、単行本となって、あらわれて、はじめて一本を・・・ 小川未明 「書を愛して書を持たず」
・・・ 註 本文に引例した諸家の作品を、直接に見ようと思われる読者のために、それ等が何に収められているかを、記して置く。「興津彌五右衛門の遺書」・「阿部一族」・「佐橋甚五郎」、「高瀬舟」「寒山拾得」・「じいさんばあさん」、「椙原品・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・山本有三氏が自身の作品を特殊な場合の引例に供せられた事につき、某新聞の文芸欄で感想を述べておられます中に今日の社会生活の情勢では、母になりたくてもなり得ない事情に置かれている女が何人いるであろうか、と云う意味の事を云って居られます。感想は未・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・これは失礼な引例かもしれませんが、この作家の発展に期待することが大きいだけ私たち一般の市民的経済状態の悪さと、ジャーナリズムの商業主義――これも要するにインフレーションの結果だけれど――をしみじみ思うのです。私たち自身を、民主主義作家として・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・博い引例や、自在な諷刺で雄弁であり、折々非常に無邪気に破顔すると大きい口元はまきあがり、鼻柱もキューと弓なりに張っている。ひろ子は自分が美術家であったら、この、独特な、がっちりと動的に出来上った人物をどういう手法であらわすだろうと思った。一・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・更に現代の引例として、やはりイギリスの国際的地位にある婦人作家ヴァージニア・ウルフの書いたものの一節を引用してあった。それは、婦人の時間は台所や子供部屋や寝室の間にまぎれ過されることが実に多い。私は一方ならない困難の後に、やっと小さいながら・・・ 宮本百合子 「夫婦が作家である場合」
・・・先生は丹念にカードを作る人であったから、調べた材料は相当に整理せられていたのでもあろうが、しかしああいう引例の多い議論を病床で口授するということは、どうも驚くのほかはない。おそらくあの問題を絶えず追いかけているうちに、頭のなかで議論のすじ道・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫