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・・・ひとり出かけて行って秋三の狡さを詰ろうかとも思ったが、それは矢張り自分にとって不得策だと考えつくと、今更安次を連れて来てにじり附けた秋三の抜け目のない遣方に、又腹立たしくなって来た。 安次は食べ終ると暫く缶詰棚を眺めながら、「しびは・・・
横光利一
「南北」
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・・・こういう事になると子供は露骨に意地を張り通します。もちろん私は子供のわがままを何でも押えようとは思いませんが、しかし時々は自分の我のどうしても通らない障壁を経験させてやらなければ、子供の「意志」の成長のためによろしくないと考えています。で、・・・
和辻哲郎
「ある思想家の手紙」