・・・しかし、この心理はいつもけっして、当事者たちによってその動機そのものを率直に示されません。昔のプロレタリア文学運動にたいする政治的偏向の批判とか、文学における世界観の課題にたいする過小評価、作家論の場合は平野謙の小林多喜二にたいする批評など・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 第二は、結婚生活を、全く当事者間の箇人的結合と云う点にだけ強調して、互の事業を完成させる為、又は、互の精神的肉体的欠点を後代に遺伝させない為、全然子供を期待しないもの。 最後に、非常な下層民で、生活の機能、人格価値などに対してはま・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ ある作家が、ただ実際はこうであったという自分なり人なりの経験にだけ頼って、その範囲内で一つの事件をみて小説を書いた場合、読者は必ずしもその作品から実際事件が当事者達に与えたような感銘を受取り得るとは限らない。屡々反対の結果が起っている・・・ 宮本百合子 「問に答えて」
・・・ ただこの場合、当事者の夫人の虚栄心が災いを引き起したという事が主として強調されていますが、私ども女にとっては、何か合点の行くような行かないような気がします。 女の虚栄心ということは、昔から一つの通俗的な世間道徳の戒めとなっており、・・・ 宮本百合子 「果して女の虚栄心が全部の原因か?」
・・・ 然し、それ等の事実に対する当事者、周囲の心の態度は、或る時代、社会によっていろいろに異う。今日、我々はどう考えても、ヘレナ一人のために、二つの部族と神々まで加えた戦争を惹起するような空想は、たとい一種のロマンスとしても実感を以て描くこ・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・日本文学の歴史において一つの画期を示したこの自我の転落は、当事者たちの主観から、未来を語る率直悲痛な堕落としては示されず、何か世紀の偉観の彗星ででもあるかのような粉飾と擬装の下に提示され、そこから、文学的随筆的批評というようなものも生じた次・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・協会は当事者として聴取者に求めている。「何事に対しても多数の人が銘々の意見や希望を投書によって率直に述べるということは其事業を大衆的に効果あらしめる最もよい手段であって、ラジオに対する欧米人の態度が丁度このよい例である。」と。更に「ラジオは・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・の問題でなくて、当事者である男女の問題として扱われるようになった。「家」は、家庭を単位として扱われることになり、そこには夫と妻と子供たちとのひとかたまりが、基本として考えられるようになった。「家」の嫁は、はっきりと夫の妻、子の母、としての立・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・母権時代は、現実の上には遠く遙かに過ぎ去っているのであったから、そういう主張をした婦人たち自身の恋愛や結婚にしろ、わずかに当事者たちの選択の自由、自主性、を示し得たに止った。そしてその女性たちの選択の自主性が、はたしてどれだけ人間的に社会的・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・それは、工場、官庁その他の公共的な場面に働く勤務者が、私たちと全く同様な生活の必要から一定の要求をすると、当事者たちは、その要求を拒絶出来ない代り、忽ち、その結果を、一般市民これを見よ、とでもいう風な、其々の部門での値上りとして反映させるこ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫