今日の社会状態において、婦人を家庭へ閉じこめて、社会の生活戦線における職業に進出することを防ぐことは不可能である。このことはたとい理想的社会が実現されたる暁においても、当為としての法則として、婦人の就職を妨げるいわれはない・・・ 倉田百三 「婦人と職業」
・・・存在の前に当為があるなどいって、いわゆる実践理性の立場から道徳の形式が明にせられたとしても、真の実践は単に形式的に定まるのではない。此にも内容なき形式は空虚である。人は真実在は不可知的というかも知らない。もし然らば、我々の生命も単に現象的、・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・その道理というのは、自然現象の中にあるきまりを意味するとともに、また人間の行為を支配する当為の法則をも意味している。しかもその後者を考えるに際して、かなり綿密である。たとえば人間の道理の一例として、彼は、「身持が身の程を超えれば天罰を蒙る」・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫