・・・ 現在の私たちが生きている世界の空気の中で、もし科学教育やその知識の大衆化が、応用的な面でだけとり上げられるとしたら、そこには大きい後退が生じるだろうと思う。ラジオの短波は科学的発達の一定段階に立ってはじめて人間の支配下におかれた現象で・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・とったにしろ、或は一定の範囲での同感を示したにしろ、何らかの意味で彼等にとっても一つの社会的刺戟、張り合いとなり、新たな社会への道と新たな文学発生の可能性とを感じさせていたプロレタリア文学運動の一時的後退は、ブルジョア・インテリゲンツィア作・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・それは、どうしてプロレタリア文学運動の中では、一例をあげれば職場でのストライキが高潮に達した時にあぶなっかしい幹部として監視をつけられたというような話のある人や、左翼の政治的活動から自発的に後退の形をとってきたような人が、組合にいたとか、組・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・しかし、歴史の光に照して見れば、後退的な「素朴な実証」主義の合理化、憧憬は、小林氏の心持をもつよく引いていて、この批評家もやっぱり文中に福沢諭吉の少年時代の逸話を引用して、近代の科学は「いつも人間的才能を機械的才能に代置するという危険な作業・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・望、動揺、逸脱の性質などを若き時代が十分の尊敬と判断力とをもって究明すべき所以は、それらの現象の殆ど悉くが古い文化の重圧的影響と身をもって組みうつ未熟な而も驚くべき発展性をもったプロレタリア文化の一歩後退二歩前進の姿であるからである。窮極に・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・に一言ふれるならば、この作は傑作であるにかかわらずゴーリキイの発展の歴史及びロシアの労働者階級の発展の歴史、どちらから見ても一時の後退を示した作品であった。ゴーリキイは正しい社会を建設するためのよりどころとなる社会的勢力を「フォマ・ゴルデー・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
出典:青空文庫