・・・頭髪にチックをつけている深水は、新婚の女房も意識にいれてるふうで、「――わしも応援するよ、普選になればわれわれ熊連は市会議員でも代議士でも、ドンドンださんといかん」 いいながら、こんどは三吉を仲間にいれようとする。「君ァどうかね・・・ 徳永直 「白い道」
・・・白い旗が、ヒラヒラと、彼の生前を思わせる応援旗のようにはためいた。 安岡は、そのことがあってのちますます淋しさを感ずるようになった。部屋が広すぎた。松が忍び足のように鳴った。国分寺の鐘が陰にこもって聞こえてくるようになった。 こうい・・・ 葉山嘉樹 「死屍を食う男」
・・・ だが、青年団、消防組の応援による、県警察部の活動も、足跡ほどの証拠をも上げることが出来なかった。 富豪であり、大地主であり、県政界の大立物である本田氏の、頭蓋骨にひびが入ったと云う、大きな事実に対して、証拠は夢であった。全で殴った・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・唯この上は女子社会の奮発勉強と文明学士の応援とを以て反正の道に進む可きのみ。事は新発明新工夫に非ず。成功の時機正に熟するものなり。一 言葉を慎みて多すべからず。仮にも人を誹り偽を言べからず。人の謗を聞ことあらば心に納て人に伝へ語・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・新聞で見た応援の人字など、若々しく熱中した思いつきの面白さも感じられていたのに。そう思いました。このことにつづいて、スポーツに関し、私の心にきつく刻まれている思い出があります。それは多分プラーグかでオリンピックのあった時だと思います。まだ健・・・ 宮本百合子 「現実の問題」
・・・組合の政治教育、文化・文学教育も、政治教育はとくに活溌ではあったが、それとても自分のところの組合組織の確立、ストライキ、他の組合のストライキの応援と、職場の活動的な分子ほど、彼の二十四時間は寸刻のゆとりもなかった。この種の事情は産別宣伝部で・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 神崎氏の年表に、三十六年鳩山春子選挙演説を行うとあるけれども、それは恐らく愛する良人か息子のために、この有名な老夫人が出馬応援したという範囲のことであろう。 大正九年、大戦後の波は日本の社会にもうちよせ平塚雷鳥の新婦人協会が治安警・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・ もう一人の車掌が応援にやって来て、「だから五銭です」と、答えにならぬような答えをした。「なあんだ! インチキじゃアないか!」 すると、はじめの方の車掌が、腹立しそうな半分冗談のような口調で、「――臨時を余りいじめな・・・ 宮本百合子 「電車の見えない電車通り」
・・・当時秋月には少壮者の結べる隊ありて、勤王党と称し、久留米などの応援を頼みて、福岡より洋式の隊来るを、境にて拒み、遂に入れざりしほどの勢なりき。これに反対したる開化党は多く年長けたる士なりしが、其首にたちて事をなす学者二人ありて、皆陽明学者な・・・ 森鴎外 「みちの記」
出典:青空文庫