・・・ それ故に、課外の情操教育や、乃至人格を造る上に役立つ教化は学校教育と併行して奨励されなければならぬ急務に迫られています。児童を中心とする文学は、それ自からの中に児童の世界を展開し、生活し、観察し、思考することより描かれたものでなければ・・・ 小川未明 「新童話論」
・・・今後の戦争科学者はありとあらゆる動物の習性を研究するのが急務ではないかという気がして来る。 光の加減で烏瓜の花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛も考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後に独りではじける。あ・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・今後の戦争科学者はありとあらゆる動物の習性を研究するのが急務ではないかという気がして来る。 光のかげんでからすうりの花が一度に開くように、赤外光線でも送ると一度に爆薬が破裂するような仕掛けも考えられる。鳳仙花の実が一定時間の後にひとりで・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・当たってそういう土民に鉄筋コンクリートの家を建ててやるわけにも行かないとすれば、なんとかして現在の土角造りの長所を保存して、その短所を補うようなしかも費用のあまりかからぬ簡便な建築法を研究してやるのが急務ではないかと思われる。それを研究する・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ ともかくも、こういう大切な観測事業をその日暮しその年暮しになりやすい恐れのある官僚政治の管下から完全に救出して、もう少し安定な国家の恒久的機関を施定することが刻下の急務ではないかと思われる。そうすれば凶作問題なども自ずから解決の途につ・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・政府でも火災の軽減を講究する学術的機関を設ける必要のあることは前述のとおりであるが、民衆一般にももう少し火災に関する科学的知識を普及させるのが急務であろうと思われる。少なくもさし当たり小学校中等学校の教程中に適当なる形において火災学初歩のよ・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・癌研究所と同様に国家癌の科学的研究所の設立も今日の国家の急務であるかもしれないのである。 十三 九月中旬になって東京の街路を飾るプラタヌスの並み木が何か思い出しでもしたように新しい芽を出している。老衰して黒っぽく・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・しかしわれわれの新しき時代は絵のような美しい伝統を破棄するの急務に追われているばかりである。 この二、三日方々から頻に絵葉書が来る。谷川を前にした温泉宿や松の生えた海辺の写真が来る。友達は皆例の如く避暑に出かけたのだ。しかし自分はまだ何・・・ 永井荷風 「夏の町」
・・・新設されべき文芸院が果してこの不振の救済を急務として適当の仕事を遣り出すならば、よし永久の必要はなしとした所で、刻下の困難を救う一時の方便上、文壇に縁の深い我々は折れ合って無理にも賛成の意を表したいが、どうしてそれを仕終せるかの実行問題にな・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・実に教育の箇条は、前号にも述べたる如く極めて多端なりといえども、早くいえば、人々が天然自然に稟け得たる能力を発達して、人間急務の仕事を仕遂げ得るの力を強くすることなり。その天稟の能力なるものは、あたかも土の中に埋れる種の如く、早晩萌芽を出す・・・ 福沢諭吉 「家庭習慣の教えを論ず」
出典:青空文庫