・・・今日封建性に反対するという名目で私たちの間に性的な放恣がないであろうか。インフレーションはたれの経済生活をもうちこわしている。インフレーションに名をかりて、金の上でのルーズさが案外見のがされているところがあるのではないだろうか。勤労階級の解・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・けれども私たちは人間の男と女であって、他のけだものではありません。性的にだけ生きているのではなく、性をもつ人間として生きているのです。だから、人間同士の性的な魅力というものは、直接な性の表現ばかりにあるのではありません。どんな真面目な話をし・・・ 宮本百合子 「悔なき青春を」
・・・それはあり得ることとして、その男がそれほどクドクドとこまかく、根ほり葉ほりその性的刺戟をめぐって心理穿鑿をやる。果してそれはボルシェヴィキらしい生活態度と云えようか。 息子のピオニェールが父親に対して批判をもっている。だが、その描写の自・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・これらのものは過去の社会制度、組織、または生れながらにして与えられた性的関係――これは日本の女だけかも知れないが――女の個性の充分の発達を阻止しつつあるからではないのでしょうか。 この芸術に専念する力を阻止するもの、今それをデリケートな・・・ 宮本百合子 「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」
・・・元来は一つの宗教運動で、公衆の前で自分の罪を告白し悔い改めることを眼目としたが、告白の内容は性的なものが多く、オックスフォード大学からの抗議でオックスフォード運動という名前を使うことをやめさせられた。アメリカでもプリンストン大学では、校内で・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ 男装の麗人富美子というひとの生理的欠陥云々について医学的記述は示されていないから私達はそれについて謂わば何も知らないに等しいが、暗示されている言葉によって想像されるような不幸な性的混錯、或は錯倒であると仮定して、私はやはりその生物学的・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・日本人と云う総称が、其の裡に無数の箇性的差異を包含して居る通り、人類と云う響は又其の内に、箇々の民族的差異をも暗示して居ります。 其故私は、国民的名称の差異に意識無意識に左右された批評は好みません。私は米国人とその名を以て、その約束的符・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 少年の間、彼は全くそういう窒息的な環境に馴らされ、些の反撥も苦悩もなく過し、十六歳の年まで読書さえ母の監視つきであった。性的にも内気で無垢であり、従妹のエマニュエル只一人が愛情の対象であった。「一切金銭の心配からはなれ」息子の処女出版・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・一面男性よりも性的の徹底性を持ちながら、芸術家になり切れない道徳性の為めに、フッ切れない女性の力のはがゆさが痛切に感ぜられます。 これは僅かにその一二の例に過ぎないが、これらの点からも女性はもっともっと力強く自己を開拓する必要があると思・・・ 宮本百合子 「女流作家として私は何を求むるか」
独断 芸術的効果の感得と云うものは、われわれがより個性を尊重するとき明瞭に独断的なものである。従って個性を異にするわれわれの感覚的享受もまた、各個の感性的直感の相違によりてなお一段と独断的なものである。それ故に文学上に於ける感覚・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫