・・・日本の人民が明治二十七八年の戦争以来、敗けない日本軍の幻想と偏見にだまされつづけて、国内のファシズムに抗争する正当な世界情勢についての判断をうばわれ、そのための真実な気力も失わされていたように。 わたしたちは、こんにちこそ、国際的な先入・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・けれども、何年、何の時代に、どういう情勢のもとに起ったことだという意味での具体性のないのが、アレゴリーの中の行為の特性である。 ところで、ごく簡単にしらべて、こういう特徴を見つけたアレゴリーがプロレタリアの文学として、実際どのくらい役に・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・年代の若い人々にとって、特に意味をもっているわけは、この長篇小説の作者が、主人公ジャックの成長して行った当時のフランスの中流社会の生活ぶり、その気分を客観的にとらえていると同時に第一次大戦前後の社会的状勢も客観的な歴史の眼で描きだそうとして・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・そして、ジェネヴァで、第一次ヨーロッパ大戦のはじまる前後のきわめて切迫した国際情勢にふれる。 やがて、第一次ヨーロッパ大戦にまきこまれたジャックが、どういう風に国際的な資本主義経済の自己撞着と戦争の矛盾を発見し、彼のヒューマニティーに立・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・ 村の社での演説の失敗は、これら数多の必要な情勢分析の不確実さから生じた当然の帰結であった。彼が戦闘的唯物論者らしく部落内の現象の分析綜合をなし得たら、「彼女の古い精神がいかに社会変革をきらっていようとも彼女のからだ――生活はこれを熾烈・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・一方には、現在の状勢でプロレタリア文学運動の確立のために組織活動なしでどうするものぞ、組織活動によってこそ、多数者獲得の課題に答え得るのだ、今書けないのは仕方がない、という左翼的日和見主義があり、他には、時間の問題とする部分もある。創作をす・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・解決するには余りに重大な社会情勢であることを直感しはじめているのではないだろうか。 諸新聞には、三土内相その他政党首領たちの言葉として、制限連記制が不適当な方法であったことを強調された。婦人代議士のどっさり出たことも、この不適当な選挙方・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ いつもその時ソヴェトの全勤労者がおかれている社会的情勢、細かく云えば党と職業組合との決定した線にそうて新らしい脚本は選ばれている。 ピオニェールの挨拶は何という言葉か?「用意はいいぞ!」 常に、用意はいいぞ! ソヴェト・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・ひところ、あの映画もこの頃の情勢で公開されないかもしれないなどと言われていたが、ともかく観ることが出来てうれしかった。 ずっと昔、リリアン・ギッシュが主演して大好評であった「ブロークン・ブラッサム」という映画があった。日本のタイトルは何・・・ 宮本百合子 「映画の語る現実」
・・・これらは兼良の没後数年にして起こったことであるが、世界の情勢からいうと、インド航路打通の運動がようやくアフリカ南端に達したころの出来事である。 このころ以後の民衆の思想を何によって知るかということは、相当重大な問題であるが、私はその材料・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫