・・・ 流石に、ラッセルは、我が国に来て講演した際に、社会進化の考察を二つの立脚点からすることを忘れなかった。経済制度の改革に、これに伴うに精神進化をもってしたのです。真理に対する憧憬は其の一つです。愛を感じ正義に味方することが、またその一つ・・・ 小川未明 「民衆芸術の精神」
・・・ これを方今、我が国内にある上下二流の党派という。一は改進の党なり、一は守旧の党なり。余輩ここに上下の字を用ゆといえども、敢てその人の品行を評してこれを上下するに非ず。改進家流にも賤しむべき者あらん、守旧家流にも貴ぶべき人物あらん。これ・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・数百年の久しき、日本にて医学上の新発明ありしを聞かざるのみならず、我が国に固有の難病と称する脚気の病理さえ、なお未だ詳明するを得ず。ひっきょう我が医学士の不智なるに非ず、自家の学術を研究せんとして、その時と資金とを得ざるがためなり。 わ・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・ さればかの文明富強の根本たる教育を受けたる者が、国を富ますためには、まずもって自身の富をいたすの必要なるは申すまでもなきことなるに、世間の実際はこれに反し、およそ我が国の学者として大いに資産を作り出だしたるものを見ず。いかなる専門の一・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
・・・その言にいわく、近来我が国の子弟は、その品行ようやく軽薄におもむき、父兄の言を用いず、長老の警をかえりみず、はなはだしきは弱冠の身をもって国家の政治を談じ、ややもすれば上を犯すの気風あるが如し。ひっきょう、学校の教育不完全にして徳育を忘れた・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・ 方今、我が国に外国の交易始り、外国人の内、あるいは不正の輩ありて、我が国を貧にし我が国民を愚にし、自己の利を営んとする者多し。されば今、我が日本人の皇学・漢学など唱え、古風を慕い新法を悦ばず、世界の人情世体に通ぜずして、自から貧愚に陥・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・即ち我が国衣食住の有様は云々にして習俗宗教は斯の如しなどと、これを示しこれを語りて、時としてはことさらにその外面を装うて体裁を張るが如き、これなり。例えば今日の実際において、吾人の家に外国人の来るあれば、先ずこれを珍客として様々に待遇の備え・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・そもそもこの物理学の敵にして、その発達を妨ぐるものは、人民の惑溺にして、たとえば陰陽五行論の如き、これなれども、幸にして我が国の上等社会には、その惑溺はなはだ少なし。拙著『時事小言』の第四編にいわく、「ひっきょう、支那人がその国の広・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・我が輩の所見にては我が国教育の仕組はまったくこの旨に違えりといわざるをえず。 試に今日女子の教育を視よ、都鄙一般に流行して、その流行の極、しきりに新奇を好み、山村水落に女子英語学校ありて、生徒の数、常に幾十人ありなどいえるは毎度伝聞する・・・ 福沢諭吉 「文明教育論」
・・・ 誰も、我が国、我国と怒鳴りながら、大汗を掻いて騒ぎ立てないでも好ろしゅうございましょう。又誰も、「彼国」彼の国と指差しながら、周章ふためいて、喚きながら馳けずり廻らないでも好いのではございますまいか。 矢鱈に興奮許りしても、人間の・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
出典:青空文庫