・・・自ら顧戒めて改去べし。中にも智恵の浅き故に五の疾も発る。女は陰性也。陰は夜にて暗し。故に女は男に比るに愚にて、目前なる然べきことをも知らず、又人の誹るべき事をも弁えず、我夫我子の災と成るべきことをも知らず、科もなき人を怨怒り呪詛ひ、或は人を・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・余はとくにこれを諸氏に警めざるをえず。ただ諸氏に向って然るのみならず、現在、余が実子等へ警しむるところも、この旨より外ならず。 余をもって今の第二世の後進生を見れば、余が三十余年前に異なり、社会の事物はすでに文明開進の方向を定めて変化あ・・・ 福沢諭吉 「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」
・・・ 今試みに社会の表面に立つ長者にして子弟を警め、汝は不遜なり、なにゆえに長者につかえざるや、なにゆえに尊きを尊ばざるや、近時の新説を説きて漫に政治を談ずるが如きは、軽躁のはなはだしきものなりと咎めたらば、少年はすなわちいわん。君は前年な・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・例えば女子の天性を男子よりも劣るものと認め、女は陰性なり、陰は暗しなど、漠然たる精神論を根本にして説を立つるが如きは、妄漫無稽と称すべきなれども、その他は大抵皆女子を戒めたる言の濃厚なるものに過ぎず。我輩がかつて戯れに古人の教えを評し、町家・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・印度の聖者たちは実際故なく草を伐り花をふむことも戒めました。然しながらこれは牛を殺すのと大へんな距離がある。それは常識でわかります。人間から身体の構造が遠ざかるに従ってだんだん意識が薄くなるかどうかそれは少しもわかりませんがとにかくわれわれ・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 出しなに、お君に、汽車賃から差し引いた一円の残り金を紙に包んで枕の下に押し込んでやって、川窪から達の事について面白くない事をきいて来た、今度来たらお前から聞いて戒めて置けと云い置いた。 お君は別れの挨拶もろくに出来ないほど悲しがっ・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・何かで、下駄の前歯が減るうちは、真の使い手になれぬと剣道の達人が自身を戒めている言葉をよんだ。 マヤコフスキーの靴の爪先にうたれた鋲は、彼の先へ! 先へ! 常に前進するソヴェト社会の更に最前線へ出ようと努力していた彼の一生を、実に正直に・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 女の虚栄心ということは、昔から一つの通俗的な世間道徳の戒めとなっており、犯罪の裏には女ありなどといわれますが、この夫人の派手ずきな気質を助長させ、またそれを可能ならしめるような周囲の事情というものが、大きい結果を生んだのだということも・・・ 宮本百合子 「果して女の虚栄心が全部の原因か?」
・・・後に聞けば、或る西洋人に戒められて、小説と云うものを読まぬ君も、Wilhelm Meister や Geisterseher 位は知っていたので、私の詞を聞いて、白内障の手術を受けたように悟ったのだそうである。 この事があってから私は、・・・ 森鴎外 「二人の友」
・・・最初文芸委員会がファウストを訳することを私に嘱した時、向軍治さんが一面委員会の鑑職の足らぬを気の毒がり、一面私の謙抑しないのを戒めて下すった。世間は向さんの快挙を見て、それからは誤訳者と云えば私、私と云えば誤訳者、誤訳書と云えばファウスト、・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫