・・・とだれかが言っているのは真に所由のあることと思われる。 紙数に制限のあるために省略した項目の中にはたとえば「字幕」の問題や、映写幕の形状の問題のごときものがある。また芸術的実写映画としての山岳映画や猛獣映画のごときものについても・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・同様に例えば日本の短歌の詩形が日本で始めて発生したものと速断するのも所由のないことであろうと思う。 五七五七七という音数律そのままのものは勿論現在では日本特有のものであろうが、この詩形の遠い先祖となるべきものが必ず何処かにあったであろう・・・ 寺田寅彦 「短歌の詩形」
・・・この、物質界に行われる原理を、鉛を食う虫の場合の生理的現象に応用する訳には行かないし、いわんや人間の精神現象に持ち込むべき所由はもとよりない。それにもかかわらず「無駄を伴わない滓を出さない有益なものは一つもない」という言明は、どうも少なくも・・・ 寺田寅彦 「鉛をかじる虫」
出典:青空文庫