・・・ 椿岳は着物ばかりでなく、そこらで売ってる仕入物が何でも嫌いで皆手細工であった。紙入や銭入も決して袋物屋の出来合を使わないで、手近にあり合せた袋で間に合わしていた。何でも個性を発揮しなければ気が済まないのが椿岳の性分で、時偶市中の出来合・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・の次に「手細工に雑箸ふときかんなくず」があり、しばらく後に「引き割りし土佐材木のかたおもい」がある、これらも一つの群と見られる。また「梅の枝おろしかねたる暮れの月」と「かれし柳を今におしみて」の二つもこの二つで一群をなし、なおまた前の三つの・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・我々は創作に際して手細工に土人形をこさえるような自由を持っていない。我々はむしろ姙まれたものに駆使されその要求する所に無条件に服従するほかないのである。 特に芸術のごとき複雑困難な表現手段を必然的に必要とする内生は、非常に高められたもの・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫