・・・その心の動因は、人間精神の成長とその合理への方向への信頼であり、他の面からそのことを云えば、不合理なものへの承服しがたさへの確信と、その承服しがたき事象の裡から、僅かなりともより承服しやすき方向への推進の力づくし、心づくしと云うことが出来る・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・だがその某氏は、現代ジャーナリズムが或る方面から極度に批判性を抹殺されていることに対しては、ジャーナリズム本来の性質に立って全く正当な不承服を感じているのが事実なのである。 理想主義と実利主義との摩擦はジャーナリズム経営の立場にある人々・・・ 宮本百合子 「微妙な人間的交錯」
・・・こんにち、権力をもっている支配者たちの法律がそれをどう擁護するにしろ、正直な人民の正義感はそれに承服しません。ブルジョア文化・文学の感覚では、こういう種類の憤りの実感をいわゆる「イデオロギー的表現」として型にはめています。頭で考えていわゆる・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・審判の日には天国と地獄とへ引きわけられなければならないというに到っては、迚もそのような信仰をありがたがることは出来ず、ひいては、自分も手つだってこしらえる子供の本が、そういう考えで作られてゆくことにも承服しかねたらしい。段々二人の間に議論が・・・ 宮本百合子 「本棚」
・・・その時私は承服し兼ねたが、しかし考えてみると私はディクンスの本体を知らない。それにドストイェフスキイには浪漫派らしい弱点がある。恐らく夏目先生の非難は当たっているのだろう。 けれどもドストイェフスキイの偉大な内生活は表現の上の欠点を消し・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫