・・・百日の後彼は再び鎌倉に帰って松葉ヶ谷の道場を再興し、前にもまして烈々とした気魄をもって、小町の辻にあらわれては、幕府の政治を糺弾し、既成教団を折伏した。すでに時代と世相とに相応した機をつかんで立ってる日蓮の説法が、大衆の胸に痛切に響かないは・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・わたくしは群生を福利し、きょうまんを折伏するために、乞食はいたしますが、療治代はいただきませぬ」「なるほど。それでは強いては申しますまい。あなたはどちらのお方か、それを伺っておきたいのですが」「これまでおったところでございますか。そ・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
・・・しかしそれはあの男のためには、疾くに一切折伏し去った物に過ぎぬ。 暴風が起って、海が荒れて、波濤があの小家を撃ち、庭の木々が軋めく時、沖を過ぎる舟の中の、心細い舟人は、エルリングが家の窓から洩れる、小さい燈の光を慕わしく思って見て通るこ・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
出典:青空文庫