・・・私もちょっと拝借しようと思うのですが、前に述べた意識の連続以外にこんな変挺なものを建立すると、意識の連続以外に何にもないと申した言質に対して申訳が立ちませんから、残念ながらやめに致して、この傾向は意識の内容を構成している一部分すなわち属性と・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・「どれ――ちょっと拝借」 藍子は、脱いだ帽子をかぶせて突いていた尾世川のステッキで、波打際の砂を掘りかえした。「こんなところ……誰かとっちゃっただろうな」 下駄と足袋をぬぎすて、藍子は踝とひたひたのところまで入って行った。・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・若しお智慧を拝借出来たら大変仕合せです」 すると、赤い着物の恐ろしい女は答えた。「心配なさらないでようございますよガラハート、私はあなたの武勇を崇拝しているから、答を与えて上げましょう。女がこの世で一番欲しいと思っているものは『独立・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫