・・・しかし近頃は慾の深い奴が多いから、幽霊が居るなら一つふんじばって浅草公園第六区に出してやろうなんていうので幽霊捕縛に歩行いて居るかもしれないから、うっかり出られないが、失敬ナ、悠々と詩を吟じながら往ってしまやがった。この頃此処へ来る奴にろく・・・ 正岡子規 「墓」
・・・三月三日、ベルギー官憲はマルクスを捕え、マルクス夫人も捕縛して一晩留置場へ入れた。この無法なやりかたは、当時のブルッセル市民を怒らせた。しかし、彼らにマルクス一家の生活を保護する力はなかったのである。マルクスたちは翌日パリへ赴いた。 パ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・そこで、反革命分子がソヴェト法律を逆用して遂にその労働者出の工場管理者を国家保安部に捕縛させた。然し、工場内の革命的分子は、黙って見ていない。熱心な、階級的な彼等の努力が、最後に反革命分子の一人の心をうごかし自己批判をよびさました。そして、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 十月二十五日の夜臨時政府内閣が捕縛されたときの号外が、そこに貼られていた。 未来の交代者 ソヴェト同盟が、この地球でたった一つの社会主義国として自分の国を守り、将来、社会主義的社会をますます完成させて行く・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・一冊の雑誌、一冊の本、風呂屋、理髪店での世間話さえ、それが戦争についての批評めいたものだと密告され、捕縛され、投獄された。私たちは、今もなお悪夢のような印象で一つのポスターを思い出す。省線各駅、町会の告知板に、徳川時代の、十手をもった捕りか・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・キエフ駅の油差しとして労働しているうちに運動に入り、労働者の研究会を組織した。捕縛されて二年の牢獄生活の後、シベリアのヤクーツクに流刑された。十年間そこに暮した。革命的学生として同じ頃流刑されていたコロレンコを知っていた。 苦しい動揺の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・憲兵の耳と捕縛する手というものは、殆ど人の集まるあらゆる処に張り繞らされた。雑誌という雑誌、本という本、演説という演説、それは総て人民の苦痛を抑えて、この戦争の「聖戦」であること、国民が辛抱すればこの戦争は必ず勝つこと、すべての責任は人民に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫