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・・・「なるほど……赤坊の手を捩るようなものだから放っておいたんだが、この頃メキメキ高度になって来たじゃないですか、え? こんなに高度になっては放っても置けない、え? そうでしょう?」 四月号の時評だの、投書だののあっちこっちに赤線が引っ・・・
宮本百合子
「刻々」
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・・・丁度その刹那、上体を少し捩るような姿勢で歩いていた千鶴子が、唇を何とも云えぬ表情で笑うとも歪めるともつかず引き上げた。千鶴子は勿論はる子がそこにいることは知らない。が、それは特徴ある表情で、見覚えがあるとともにはる子の出かけた声を何故か引こ・・・
宮本百合子
「沈丁花」