・・・これまでいい意味での女らしさの範疇からもあふれていた、現実へのつよい倦むことない探求心、そのことから必然されて来る科学的な綜合的な事物の見かたと判断、生活に一定の方向を求めてゆく感情の思意ある一貫性などが、強靭な生活の腱とならなければ、とて・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・この場合、国際的なプロレタリア文学運動が、二十世紀の世界文学の一発展としてもたらした文学の社会性、階級性についての諸観点、および作品の芸術的実感と歴史に対する客観的認識力との微妙な生きた関係の探求などは、民主的な文学の精髄をなす。なぜなら民・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第六巻)」
・・・それから学習そのものを楽にたのしんでさせようという程度がすぎて、自立的な児童の探求心がのばされるよりもさきにあんまりたやすく解決が与えられすぎるということにもふれていました。学校教育の方式の中に当然入りこんできているキャナライゼーションとマ・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
・・・常識的な大人を恐怖させるほど率直な真実探求の欲望にもえる十五六歳より以後の年代を、これらの有能な精神は、そのままの真率さで戦争のための生命否定、自我の放棄へ導きこまれた。専門学校では文科系統の学徒が容しゃなく前線へ送り出され、理科系統のもの・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・学問こそないが、おしまも女である以上、妙に鋭い、思い込んで目をつけたらとても眼を逸しっこのない探求心というようなものを持っている。勇吉が清二が留守になってから、どうも始めて清二の嫁はまだ十八の若い、はにかみやの可愛い女であったことをしみじみ・・・ 宮本百合子 「田舎風なヒューモレスク」
・・・私の裡には、或る程度まで何でも感じて見たく、知って見たい未開人のような好奇心、よい場合には探求心がありますのです。面白いでしょう。私共の日常生活が、形式内容の上に違っているとすれば、それ等は皆、若し私の推察が誤っていなければ、異った二種の人・・・ 宮本百合子 「大橋房子様へ」
・・・魯迅の悲劇を我々は探求しなければなりません。バックの作は「民族」の理解について考えさせます。〔一九三七年五月〕 宮本百合子 「カレント・ブックス」
・・・現代文学が主題とするヒューマニズム探求の一環として見た場合、D・H・ローレンスの文学は、こんにちの現実を解明するためにローレンス氏方式ではすでに不十分であることを、明かにして来ているのである。 敗戦後の日本に、肉体派とよばれる一連の文学・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・例えば作品や技法の上で新しいものを追求しようという熱心さと、その新しいものの質の探求や新しさの発生の根源を人類の生活の歴史の流れの只中から見出そうとするような思想の規模との間に、具体的な矛盾があるとも思われます。芸術至上主義ととなりあわせて・・・ 宮本百合子 「期待と切望」
・・・社会的モラルの問題となし得る先行的な事実、新たな芸術創造のための素地の探求、理解の具体性として、生活事情と色感とのなまなましい関係が今日の問題としていかに深められているか、と考えるのであった。 二 こういう・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
出典:青空文庫