・・・だから颶風なぞは恐ろしいものではない。推算が上手になれば人間にもっとも幸福を与うるものは颶風だよ。颶風なぞを恐れる世界だから悲しいよ。それで物理学者でござるというのが有る世間だからネ。浪は螺状をなして巻き巻き進むのだよ。まだ沢山例はある、さ・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・ 岩塩の縞の数から沈積期間の年代の推算をした人もあるが、これにも多くの疑問が残されるであろう。砂岩や凝灰岩の縞なども、やはりこれらと連関して徹底的に研究さるべき題目であろう。 岩石に関してはまだ皺襞や裂罅の週期性が重要な問題になるが・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・上昇速度は目測の結果からあとで推算したところでは毎秒五六十メートル、すなわち台風で観測される最大速度と同程度のものであったらしい。 煙の柱の外側の膚はコーリフラワー形に細かい凹凸を刻まれていて内部の擾乱渦動の劇烈なことを示している。そう・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・毎日の新聞広告だけから推算しても一年間に現われる書物の数は数千あるいは万をもって数えるであろう。そうしてその増加率は年とともに増すとすれば遠からず地殻は書物の荷重に堪えかねて破壊し、大地震を起こして復讐を企てるかもしれない。そういう際にはセ・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・それで私は三人の同窓の死だけから他のものの死の機会を推算するような不合理をあえてしようとは思わない。 そうかと云って私はまた全くそういう推算の可能性を否定してしまうだけの証拠も持ち合せない。 例えばある家庭で、同じ疫痢のために二人の・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・しかし、いわゆる科学的常識というものからくる漠然とした概念的の推算をしてみただけでも、それが如何に多大な分量を要するだろうかという想像ぐらいはつくだろうと思われる。いずれにしても、暴徒は、地震前からかなり大きな毒薬のストックをもっていたと考・・・ 寺田寅彦 「流言蜚語」
出典:青空文庫