-
・・・いつかわが手から落ちるだろうと思って摘む花を、誰が一々やかましく吟味して眺め、研究して掴むだろう。そういう、とことんのところで消極的なものが包蔵されている心理で、良い恋愛の対象にめぐり会えまいことは一応わかることだし、その程度の対象では生涯・・・
宮本百合子
「成長意慾としての恋愛」
-
・・・主人やサーシャが店の裏の小室にいて、店に番頭が一人女客を対手にしていた時、番頭は赫ら顔のその女客の足にさわって、それを摘むように接吻した。「マア……」溜息をついて「何て人でしょう!」「そ、その……」 そっと腕を掻きながらその光景・・・
宮本百合子
「マクシム・ゴーリキイの伝記」