・・・しかも頗る、操作拙劣の兵である。私ひとり参加した為に、私の小隊は大いに迷惑した様子であった。それほど私は、ぶざまだった。けれども、実に不慮の事件が突発した。査閲がすんで、査閲官の老大佐殿から、今日の諸君の成績は、まずまず良好であった。という・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・そういう操作のために糸車の音に特有なリズムが生ずる。それを昔の人は「ビーン、ビーン、ビーン、ヤ」という言葉で形容した。取っ手の一回転が「ビーン」で、それが三回繰り返された後に「ヤ」のところで糸が巻き取られるのである。「ビーン」の部で鉄針とそ・・・ 寺田寅彦 「糸車」
・・・それが、多年の熟練の結果であろうが、はじめひょいと載せただけでもう第一近似的にはちゃんと正しい位置におかれている、それで、あとはただこの団塊をしっかり台板に押しつけ固着させるための操作を兼ねて同時にほんの少しの第二近似を行なうだけである。さ・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
・・・そして私の座ぶとんの上へおろして、その上で人間ならば産婆のすべき初生児の操作法を行なおうとするのである。私は急いで例の柳行李のふたを持って来て母子をその中に安置したが、ちょっとの間もそこにはいてくれないで、すぐにまた座敷じゅうを引きずり歩く・・・ 寺田寅彦 「子猫」
・・・というのは投槍のように網を突き飛ばす操作をそう云ったものではないかと思う。何しろ、もう三十余年前にただ一度実見したきりなので記憶がはなはだたしかでないが、網を張った叉手の二等辺三角形の両辺の長さが少なくも九尺くらいあり、柄竿の長さもほぼその・・・ 寺田寅彦 「鴫突き」
・・・教授や技師や学者たちの間から篤志操作者が募集された。 けれどもX光線の設備に、なくてならない電気さえひかれていないような野戦病院へ殺到して来る負傷者たちをどうしたらいいだろう。キュリー夫人はある事を思いついた。フランス婦人協会の費用で光・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・精神のラッシュにまぎれて、いかがわしい種々の操作が、今日では法律上の名目も失い、行政上の格式も失いながら、なお最下等動物のように執拗に、ぬけめない陋劣さで活躍していることも、人々が直感しているところである。 日本にとって、本当にすがすが・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・冷たい、理知だけの操作でない、対象との人間らしい共感においての観察という点の強調が、虫に頬かぶりをさせたり、草叢のアパッシュたらしめたりした。ファブルの伝記者は、アナトール・フランスがファブルの文章は悪文であると云ったということをおこってい・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・戦後、続出した新興出版事業者は、ほとんど例外なしに、この敗戦おきみやげたる紙の操作によって出発した。これらの事実については火野葦平のみならず、軍と「民間」との消息に通じた多くの人がもとより無智であろうはずはなかった。 まったく、「バクロ・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・自己完成ということは、日本ブルジョア・デモクラシーの完成という点とかかわりあった課題であると理解し「科学的な操作による自己完成の追及の堆積」を決心している青年が描かれているのです。 ここでこの作品が注目する価値をもっている点がはっきりし・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
出典:青空文庫