・・・ これからも共産主義を信奉して運動を続けて行く積りか、それとも改心して、このような誤った運動をやめようと思っているか?」と訊く。それによって、判決が決まるわけである。そこへ来ると、傍聴に来ているどの母たちも首をのばして、耳をすました。 ・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・兄さんも、改心したんだ。本当だ。改心したんだ、改心したんだ。最後の願いだ。一生の願いだ。二百円あれば、たすかるんだ。なんとかして、きょうのうちに持って来てくれ。井の頭公園の、な、御殿山の、宝亭というところにいるんだ。すぐわかるよ。二百円でき・・・ 太宰治 「花火」
・・・ どうしてって、だって、お母さんにあの晩あんなに迄されて、それでも改心しないなら、あのひとは馬鹿か悪魔だわ。 その馬鹿か悪魔は、あたしだよ。あたしなのだよ。あたしは、あの晩、あの人を本当に殺そうとしたのだ。 もういや、よしましょ・・・ 太宰治 「冬の花火」
・・・それを、若い共産党青年の仲間が改心させるという主題を扱ってる。「ふーむ。主題はいいね!」 タラソフ・ロディオーノフは、さっき文学衝撃隊組織について論じてたときよりはグッとくだけて、親しみ深い同輩の口調で云った。「われわれの日常の・・・ 宮本百合子 「「鎌と鎚」工場の文学研究会」
出典:青空文庫