・・・ 単に利害勘定からいっても、私の父がこの土地に投入した資金と、その後の維持、改良、納税のために支払った金とを合算してみても、今日までの間毎年諸君から徴集していた小作料金に比べればまことにわずかなものです。私がこれ以上諸君から収めるのは、・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・ いよいよ出でて益々突飛なるは新学の林大学頭たるK博士の人種改良論であった。日本の文化を根本的に革新するには先ず人種を改造するが先決問題であるというが博士の論旨で、人種改良の速成法として欧米人との雑婚を盛んに高調した。K博士の卓説の御利・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・それからその雑誌はだいぶ改良されたようであります。それです、私は名論卓説を聴きたいのではない。私の欲するところと社会の欲するところは、女よりは女のいうようなことを聴きたい、男よりは男のいうようなことを聴きたい、青年よりは青年の思っているとお・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・とは彼等共通の信念であった、彼等がイエスを救主として仰いだのは此世の救主、即ち社会の改良者、家庭の清洗者、思想の高上者として仰いだのではない。殊に来らんとする神の震怒の日に於ける彼等の仲保者又救出者として仰いだのである、「千世経し磐よ我を匿・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・を社会理想として実現せんとする、多かれ少なかれ、社会改良運動の実践と結びついたものであり、現実のイギリス社会に影響する所大であったものである。 街頭の実践運動の背後には常に偉大なる思想がある。そして人間を実践的社会運動に駆る思想は倫理的・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・マッチのペーパーや活字の断片がそのままに眼につくうちはまだ改良の余地はある。 ラスキンをほうり出して、浅草紙をまた膝の上へ置いたまま、うとうとしていた私の耳へ午砲の音が響いて来た。私は飯を食うためにこのような空想を中止しなければなら・・・ 寺田寅彦 「浅草紙」
・・・ 録音と発音の機械的改良が進展して来る一方でまたトーキーファンの聴覚が訓練されて来れば、発声映画の可能性はさらに拡張されるであろう。点滴の音によってその室の広さを感じ、雷鳴の響きによって山の近さを感じることも可能になるであろう。 と・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・教程や教授法にも改良の余地が沢山にあるように思われるが、第一教わる方に心掛けと興味がなければ結局何の効果もない訳である。この興味と心掛けはどこから生れるか。これが一番重大な問題である。一つには国民性もあるかもしれないが、また一つには幼い頃か・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・それで例えば煙突の振動の問題でも、従来の理論的取扱い方に不満を感じて色々の点から改良を試みた。地震計の震動体にメルデ実験に相当する作用のあるのが見逃されているのに気付いて、これを無くする考案をしたりした。また多数の共鳴体を並列して地震動を分・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・が種々の改良農具「こまざらへ」「後家倒し」「打綿の唐品」などを製出した話、蓮の葉で味噌を包む新案、「行水舟」「刻昆布」「ちやんぬりの油土器」「しぼみ形の莨入、外の人のせぬ事」で三万両を儲けた話には「いかにはんじやうの所なればとて常のはたらき・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
出典:青空文庫