・・・この老先生がかねて孟子を攻撃して四書の中でもこれだけは決してわが家に入れないと高言していることを僕は知っていたゆえ、意地わるくここへ論難の口火をつけたのである。『フーンお前は孟子が好きか。』『ハイ僕は非常に好きでございます。』『だれに習・・・ 国木田独歩 「初恋」
・・・ どうすれば、こういう側面からのサヴエート攻撃の根を断つことができるか! 呉清輝は、警戒兵も居眠りを始める夜明け前の一と時を見計って郭進才と橇を引きだした。橇は、踏みつけられた雪に滑桁を軋らして、出かけて行った。 風も眠っていた・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・そういう時には、片岡直温のヘマ振りまで引っぱり出して猛烈に攻撃する。 演説会とは、反対派攻撃会である。 そこへ行くと、無産政党の演説会は、たいていどの演説会でも、既成政党を攻撃はするが、その外、自分の党は何をするか、を必ず説く。そこ・・・ 黒島伝治 「選挙漫談」
・・・それから、ほとんど涙声になって、「バスチーユのね、牢獄を攻撃してね、民衆がね、あちらからもこちらからも立ち上って、それ以来、フランスの、春こうろうの花の宴が永遠に、永遠にだよ、永遠に失われる事になったのだけどね、でも、破壊しなければいけ・・・ 太宰治 「おさん」
・・・ 私は極貧の家に生れながら、農民の事を書いた小説などには、どうしても親しめず、かえって世の中から傲慢、非情、無思想、独善などと言われて攻撃されていたあなたの作品ばかりを読んで来ました。農民を軽蔑しているのではありません。むしろ、その逆で・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・九月一日の遼陽攻撃は始まった。 田山花袋 「一兵卒」
・・・君たちは僕が本能万能説を抱いているのをいつも攻撃するけれど、実際、人間は本能がたいせつだよ。本能に従わん奴は生存しておられんさ」と滔々として弁じた。四 電車は代々木を出た。 春の朝は心地が好い。日がうらうらと照り渡って、・・・ 田山花袋 「少女病」
・・・中に物理学者と名のつく人も一人居て、これはさすがに直接の人身攻撃はやらないで相対原理の批判のような事を述べたが、それはほとんど科学的には無価値なものであった。要するにこの演説会は純粋な悪感情の表現に終ってしまった。気の永いアインシュタインも・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・に冷淡な学者が攻撃される。しかし科学者としては事がらの可能不可能や蓋然性の多少を既成科学の系統に照らして妥当に判断を下すほかはないので、もし万に一つその判断がはずれれば、それは真に新しい発見であって科学はそのために著しい進歩をする。しかしそ・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・それから鈴木文治や、アナーキズムへの攻撃。――ことに三吉には話の内容よりも、弁士自体が面白かった。右の肩で、テーブルをおすようにして、ひどい近眼らしく、ふちなしの眼鏡で天井をあおのきながら、つっかかってくる。ところどころ感動して手をたたこう・・・ 徳永直 「白い道」
出典:青空文庫