・・・である――彼はそこで、放肆を諫めたり、奢侈を諫めたりするのと同じように、敢然として、修理の神経衰弱を諫めようとした。 だから、林右衛門は、爾来、機会さえあれば修理に苦諫を進めた。が、修理の逆上は、少しも鎮まるけはいがない。寧ろ、諫めれば・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・このとき、数学の自由性を叫んで敢然立ったのは、いまのその、おじいさんの博士であります。えらいやつなんだ。もし探偵にでもなったら、どんな奇怪な難事件でも、ちょっと現場を一まわりして、たちまちぽんと、解決してしまうにちがいない。そんな頭のいい、・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・あの人は五十ちかくなって軍医総監という重職にあった頃でも、宴会などに於いて無礼者に対しては敢然と腕力をふるったものだ。いや、記録にちゃんと残っています。くんづほぐれつの大格闘を演じたものだ。鴎外なおかくの如し。いわんや、古来の大人物は、すべ・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・ 人間がそう云う心持を持って居るとしたら、その心持が戦争を起し、涙一つこぼさずに殺し合うのも亦当然では無いかと若しも云う人があったら、私は、敢然として否定しなければならない。 そう、人間は確かに祖国の土から、彼等の足を離す事は出来な・・・ 宮本百合子 「無題」
出典:青空文庫