・・・ 以前のロシアは御承知の通り結婚する娘達が髪を編みながら悲しみを歌って結婚した状態で、女の文盲率というものも高かった。教会の坊主は亭主に絶対的服従を強いた。それだから、革命後の現在でもそういう歴史的理由によって一般の知識程度が男より低い・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・ 中国の文化はまだ甚しく不均衡で、民衆の文盲率は高く、文章によって生計を保ちがたい状態かもしれない。出版ということは、利潤追求の手段となっていない程度であるかもしれない。しかし、文化のその状態は「春桃」に集められた作家たちの心に、食う食・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・ ヴィアルドオ夫人と知ってから後もロシアに住んでいた五〇年代の初め三年間ばかり、ツルゲーネフは非常な美人であるが、文盲な農奴の娘であるアブドーチャ・イワーノと同棲していたことがある。アブドーチャはツルゲーネフの娘を生んだ。ツルゲーネフは・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・ 革命前に於けるロシアの一般勤労婦人の状態は、目下の日本同然ひどいものでしたが、ソヴェト政府が樹立されてから、先ず生産において地位が向上し、徹底的に文盲撲滅運動がやられたので、間もなく、プロレタリア婦人の中からも続々と通信員が出、文学活・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・当時は文盲の王があり貴族があった。 日本の現在までの婦人作家が、どういう階級から出て来ているかということを考えても、事実は一目瞭然だ。 日本の既成の婦人作家はプロレタリア作家といわれている人々をこめて、没落した小市民層かそれより以上・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ロシア、中国、朝鮮の人民が文盲撲滅の第一頁においてソヴェト権力、抗戦救国、民族独立の文字を知らされてゆくのとはひじょうにちがいます。イデオロギーのたたかいは、日本においてますます複雑な課題となりつつあります。すべての専門家は、単に、大衆の文・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・ここでは、文盲退治で字がよめるようになった人たちがいきなり最高の古典にふれて行ってトルストイの小説をよむと同時にゾラをもよむという独特旺盛な興味ふかい文化摂取の道を辿っている。 日本に翻訳書が沢山出るということの背景には、やはり日本の特・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・それは、これらの人々も日本のインテリゲンツィアとして、全人民の一部として、久しい戦争の年々の間、理性的文盲政策のもとに苦しみ、すき間から洩れる光を追うように、自分たちの生存と文学の理性を辛くももちこたえてきたと同時に、マイナスの面もさけきれ・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・そして京都の辻には行倒れが絶えず、女乞食が宮廷の庭へまで入って来るような極端な貧しさの中で文盲であった。紫式部達が物語を書き、支那の詩を扇にかいてさざめいていた時、これらの謙遜であるとも知らぬほど謙遜で勤勉な庶民の女達は、自分の名も知らず、・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・或いは彼らの感覚的作物に対する貶称意味が感覚の外面的糊塗なるが故に感覚派の作物は無価値であると云うならば、それは要するに感覚の性質の何物なるかをさえ知らざる文盲者の計略的侮辱だと見ればよい。或いはまたその貶称意味が、「生活から感覚的にならね・・・ 横光利一 「新感覚論」
出典:青空文庫