・・・天井から新式な大電燈が煌々と輝いて、今あんな原っぱの夜道を通って来たということが信じられぬような印象を与える。小ざっぱりした平常着姿で本をもったりギターをもったりしている男女労働者に交って廊下へ出ると、つき当りは大舞台の入口だ。「――今・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・なるための政見を発表し、しかも時々バルザックは一八二五年の破局にもこりず熱病にかかったように大仕掛の企業欲にとりつかれ、サルジニアの銀鉱採掘事業や、或る地勢を利用して十万のパイナップル栽培計画を立て、新式製紙術の研究にまで奔走したのである。・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・先生がインドにおいてどういうふうに独立を鼓吹したか、あるいは美術院の画家たちにどういうふうに霊感を与えたか、さらにまた五浦の漁師たちをどういうふうに煽動して新式の網を作らせたか。それらのことについては自分は何も知らない。しかし先生が最もよき・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
出典:青空文庫