・・・そうしていっそう難儀なことはその根本的な無知を自覚しないでほんとうはわからないことをわかったつもりになったりあるいは第二次以下の末梢的因子を第一次の因子と誤認したりして途方もない間違った施設方策をもって世の中に横車を押そうとするもののあるこ・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・また一方下級の技術官たちの間では実に明白に有効重要と思われる積極的あるいは消極的方策があっても、その見やすい事が、取捨の全権を握っている上長官に透徹するまでにはしばしば容易ならぬ抵抗に打ち勝つことが必要である。ことにその間に庶務とか会計とか・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ら確定されており、その上に当代の有名な学者の数々を聚めているのであるから、この際思い切って気象台の観測事業の範囲を徹底的に拡張して、そうして前述のごときあらゆる天災の根本的研究とその災害に対する科学的方策の綜合的考究に努力せしめるのが最も時・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・神々が鏡や玉を作ったりしてあらゆる方策を講じるという顛末を叙した記事は、ともかくも、相当な長い時間の経過を暗示するからである。 記紀にはないが、天手力男命が、引き明けた岩戸を取って投げたのが、虚空はるかにけし飛んでそれが現在の戸隠山にな・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・これを仮に第二次の作戦とすると、そのもう一つ上の第三次の方策は第一次とほぼ同じようなことになるのである。とにかく幼少なる「加八」君はここでそのありたけの深謀をちゃんちゃんこの裏にめぐらして最後の狙いを定めて「ズドーン」と云って火蓋を切る真似・・・ 寺田寅彦 「追憶の冬夜」
・・・全く予測し難い地震台風に鞭打たれつづけている日本人はそれら現象の原因を探究するよりも、それらの災害を軽減し回避する具体的方策の研究にその知恵を傾けたもののように思われる。おそらく日本の自然は西洋流の分析的科学の生まれるためにはあまりに多彩で・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・徳田さんの意味する愛情は、女対男の限られた範囲のものではなく、女の生活全面に配られるべき人間らしい思いやり、方策、現実的な援助としての愛情を、日本の婦人は実に貧寒にしか享けていないという意味なのであった。〔一九四六年一月〕・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・人間同士の友誼が、対手の死なせかたに表現されなければならなかった当時のモラルも柄本又七郎の行動で表徴されているし、悪意ある方策によってかまえられた名誉の前に、生きるに生きがたい死を敢てする若い竹内数馬の苦痛に満たされた行動は、内藤長十郎が報・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 十一月号の『漁村』には、各県の漁業の合理化の方策がのせられていて、婦人に関する項目として、陸上の仕事はなるたけ婦人にさせること、日常生活の合理化を教え、衛生、育児の知識を授けること、女子漁民道場をこしらえて漁村婦女の先駆者たらしめるこ・・・ 宮本百合子 「漁村の婦人の生活」
・・・云われるままになるしか方策がない。今の場合、自分は、認定で送れるのだと云われても、ただ常識で、そんな不合理なことがあるか! と撥ねかえすばかりなのであった。「大体、文化団体の連中は、ものがわかるようで分らないね。佐野学なんかは流石にしっ・・・ 宮本百合子 「刻々」
出典:青空文庫