・・・ 家々の屋根や日覆が、日没前の爛れたような光線を激しく反射する往来は、未練する跡もなく撒き散して行った水でドロドロになって、泥から上るムッとしたいきれが、汗じみた人の香と混って、堪らなく鼻をつく。 皆が電車を待って居る。学校帰りの学・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・ この日没と満月の出の間、非常に短く、月は東に日は西という感じが、街を歩いて居る自分にした。「七銭で結構だよ」「いいえ! 駄目駄目」 リンゴを二つ持って、カーチーフをかぶった若い女が、大道商人とかけ合って居る。・・・ 宮本百合子 「一九二七年八月より」
・・・ランタンへ買いにゆくやぶれたのをはいて 伸子 マッフラー止め二ケ 手帖 スエ子靴下 マデレーヌのうしろの店でトーモロコシを買う8F 四本で電車でかえる。日没美しいcaf を一つのみマカロニ・・・ 宮本百合子 「「道標」創作メモ」
出典:青空文庫