・・・とにかく二十八年間同じ精力を持続し、少しもタルミなく日程を追って最初の立案を(多少の変更あるいは寄道設計通りに完成終結したというは余り聞かない――というよりは古今に例のない芸術的労作であろう。無論、芸術というは蟻が塔を積むように長い歳月を重・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・ 窪田が二十日程して釈放された。すると、直ぐ家へやって来てこんなに大衆的にやられている時に、遺族のものたちをバラ/\にして置いては悪いと云うので、即刻何処かの家を借りて、皆が集まり、お茶でも飲みながらお互いに元気をつけ合ったり、親密・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・日下部といって塾のためには忠実な教員も出来たし、洋画家の泉も一週に一日か二日程ずつは小県の自宅の方から通って来てくれる。しかし以前のような賑かな笑い声は次第に減って行った。皆な黙って働くように成った。 教員室は以前の幹事室兼帯でも手狭な・・・ 島崎藤村 「岩石の間」
・・・その翌日から予算が日程に上ぼっていて、大分盛んな議論があるらしい。その晩は無事に済んだ。その次の日の午前も無事に済んだ。ところが午後になると、議会から使が来て、大きなブックを出して、それに受取を書き込ませた。 門番があっけに取られたよう・・・ 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
・・・「あなた方の活動の日程に、この問題が本気でとりあげられています?」 女の同志は、「さあ」と考え、「皆が皆、そこまでハッキリ考えちゃいないわね」 率直に、「ああ、文化団体か! ってところはのこっているわね」と云・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・ りっぱな作品ということはむずかしいけれども、民主主義文学が日程にのぼってきているとき、一人のインテリゲンツィアとして、はっきりその課題を自分の精神成長の過程にその言葉において自覚し、苦悩して生きた作品として、やはり無視できないと思いま・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・が新たな日程にのぼされている。「多数者獲得」の新しい課題の理解は、われわれに広汎なサークル組織、革命的小ブルジョア作家、貧・中農作家などを獲得する任務を示しているが、それは決して、小市民的自由主義へ向って、妥協によって多数者を獲得するの・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ その日の前五六日程大変気をつめた仕事をして居たので、久し振りで、庭土を踏んで見ると、頸の固くなったのも忘れるほど、空の色でも、土の肌でも美くしく、明るく眼に映った。 あっちこっち歩きながら、手足をどうにかして動かしたい様な気持にな・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・ 彼の人がそんな悲しい日を送って居るときいた十日程後、私は到々思い切って手紙を書いた。 雨が静かに降って居た。 家人から遠ざかった私の書斎は夕飯時でさえやかましくない程なのに、更けた夜の淋しいおだやかさと、荒れた土の肌をうるおお・・・ 宮本百合子 「ひととき」
六月下旬にパリで四日間に亙って開催された国際ペンクラブの第十五回大会に、有島生馬氏や井上勇氏、久米正雄氏などが出席したことが新聞に出ている。その議事日程の中、委員付託による四つの問題の検討がされている。世界文学に今日のスタ・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
出典:青空文庫