・・・一日で嫌気がさしてしまったが、近いうちに記者に昇格させてやると言われたのを当てにして、毎日口惜し涙を出しながら出勤した。一つにはそこをやめてほかに働くところもありそうになかったからだ。 ある日、給仕のくせに生意気だと撲られた。三日経つと・・・ 織田作之助 「雨」
・・・ところが、卒業まぎわになって、清三は高商が大学に昇格したのでもう一年在学して学士になりたいと手紙で云ってきた。またしても、おしかの愚痴が繰り返された。「うらア始めから、尋常を上ったら、もうそれより上へはやらん云うのに、お前が無理にやるせ・・・ 黒島伝治 「老夫婦」
・・・そして日本女子大学と英学塾とは早速大学に昇格するための運動を開始した。井上秀子女史が戦時中日本女子大学校長としてどのように熱心に戦争遂行に協力したかは当時の学生たちが、自分たちの経験した過労、栄養不良、勉学不能によって骨の髄まで知りつくして・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・「つまり此の大神宮を昇格させようとする事なのです。そもそもの始りがです、維新の始、賊軍として、長い間反目されて居た此の東北地方に、尊王奉国の中心として大神宮を建てたらよろしかろうと云う有難い大御心から、わざわざ伊勢大廟の分祠として祭られ・・・ 宮本百合子 「日記・書簡」
出典:青空文庫