・・・ことが盛んに語られ、今日の読者大衆の文化的な水準というものはひどく低いのであるから、作家はそれを念頭において書くものをやさしく書かねばいかん、変に凝った、分りにくいスタイルでやっと身を保っているような書き方をやっていたのではいけない、作家は・・・ 宮本百合子 「「大人の文学」論の現実性」
・・・なるほど、科学の本としてとりあげられている題目は重要であるが、書き方は子供の印象に入りやすい方法で、従って局面も限って触れられている。この本に書いてあるほどのことなら、文化に関心をもっている大人が、一人のこさず皆知っているといえるだろうか。・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・特別鋭い観察や感情があるわけではないが、自分の仕事のなかでめぐり会った一情景と感情とを社会の姿として描き出しているところが、一番まとまっていました。書き方が小品との区別を明かにしていないようなところがありますが、ルポルタージュとしては、もっ・・・ 宮本百合子 「新女性のルポルタージュより」
・・・自分でお書きになってもいいんですというところまでは、この主人が、差入屋としては親切な部だという評判をいつしか得ている点であろうが、進んでその書き方を若い女に教えてやろうとせず、また敢て教えて下さいと云おうともしないところに、商いのかけひきと・・・ 宮本百合子 「日記」
・・・今日の社会で過去の私小説の現実のつかみかた、書き方では、主人公一人の実感さえ、それが現実にある複雑さではとらえきれなくなっている、これは明瞭である。 現実のいりこんだ関係がこんにちのように複雑になると、これまでのせまい創作方法ではその全・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・文学青年は、小説や評論から活きかたを学ぼうとするより、書き方をならおうとして読む、その特殊な読み方に作者が追随して来たから、遂にここに到ったと云われているようである。しかしながら、一般読者の胸の中には、折りかえして、では何故、現代の文学愛好・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ここに私は「書き方」の上でますます精練と簡潔と円熟とを加えて来た四五の作家を眼中に置いて考えてみよう。彼らは皆人生を底まで見きわめたようにふるまっている。彼らはさまざまな社会現象を詳らかに巧妙に描写する腕を持っている。しかし彼らが社会の裏に・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫