・・・半分はフーヴァーを写し半分は聴衆のほうにカメラを向けたのを撮ったほうが有効である。 こういう現実味からいうと演劇フィルムは多くははなはだ空疎なものである。プロットにないよけいなものは塵一筋も写さないというのが立て前であるらしい。これは劇・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・京都見物を一定時日の間に最も有効にしようというには適当な案内者あるいはこれに代るべき案内書があると便利である。そうでないと往々重要なものを見落す虞がある。近頃流行る高山旅行などではなおさらである。案内人なしにいい加減な道を歩いていると道に迷・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
・・・すなわち、ただ一つだけの因子が有効で他のすべての因子が無効な場合におけるその一つの因子の及ぼす効果だけを知れば、それらの個別的効果の総和が実際の共存的場合の効果を与えるか、というと、決してそうばかりでないということが科学上の実例にはいくらも・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・そうすればこの赤露の絵本などよりは数等すぐれた、もっと科学的に有効適切で、もっと芸術的にも立派なものができるであろうと思われる。そういう仕事は決して一流の芸術家を恥ずかしめるものではあるまいと信ずるのである。科学国の文化への貢献という立場か・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・ 以上のスペキュレーションが多少でも事実に該当するとした時に血液成分中に含まれるいかなる成分が最も有効であるかという問題が起こるが、多くの場合から類推すると、おそらく膠のようなものや脂酸のようなもので COOH 根を有するものが最も有効・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・ しかるに各課担任の教師はその学問の専門家であるがため、専門以外の部門に無識にして無頓着なるがため、自己研究の題目と他人教授の課業との権衡を見るの明なきがため、往々わが範囲以外に飛び超えて、わが学問の有効を、他の領域内に侵入してまでも主張し・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・ 博士制度は学問奨励の具として、政府から見れば有効に違いない。けれども一国の学者を挙げて悉く博士たらんがために学問をするというような気風を養成したり、またはそう思われるほどにも極端な傾向を帯びて、学者が行動するのは、国家から見ても弊害の・・・ 夏目漱石 「博士問題の成行」
・・・文芸家協会として、まとまった有効な抗議もされなかった。日本の文化は、もうすでに文化を守る生活力を失っていたのであった。 一九三三年の春、プロレタリア文化団体が壊滅させられた後、ファシズムに抗する人民戦線の問題、文学における能動精神がフラ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ このように有効に組織されている小学校へ、全同盟の学齢児童を経費国庫負担で包括しようというのがソヴェト同盟五ヵ年計画文化活動の一大事業だ。 何しろ、帝政時代のロシアの小学校、特に農村の小学校は話の外だった。小学校の教師と云えば月五ル・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ビタミンBが命の親と聞いて、メタボリンを九〇〇錠送りました、が、あとから聞いたものはみんな体一つで何とかしのがなければならない時、油紙の氷ノウに入れて体につけていて、役にたてるものばかりで極く実際的に有効です。嬉しくなって、何でも揃えようと・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫