・・・文を学ぶには国文小説も甚だ有益なれども、年少き時には外に勉む可きもの尚お多し。詠歌には巧なれども自身独立の一義に就ては夢想したることもなく、数十百部の小説本を読みながら一冊の生理書をも見たることもなき女史こそ多けれ。況して小説戯作は往々人の・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・日本の民主的な文化、文学運動をより発展させるために有益なモメントがいくつか発見されるという意味からも、こんにち、これらのソヴェト報告は生々とした価値をもっている。 これらの報告の書かれた一九三一年から三二年ごろ、日本の人民的な文化、文学・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・主婦たちが、いろいろの内容のクラブをつくって有益にたのしく暮すときくが、それはつまり家事の単純化されていることとまったくつながった文化性であることを、きょうの日本の主婦は知りぬいている。 男と同じに女も教育をうけられるようになった。やっ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・一様に日傘をささないというようなことは、外見の上では一つのジェスチュアであるけれど、健康の上にどれだけ有益なのだろう。 校長だの教師だの団体の指導者だのというひとは、当分の流行に対してよく吟味検討してみる必要がある。自分たちの思いつきに・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・ 私は全くへりくだった心持でいわば私たちの知らなさの程度を明らかにすることで、このリストがいつか段々補足され質を高められたものとなり、いくらか有益な読書の手引きとなって若い婦人たちがそのより年若い弟妹たちに与えるにたえるものとなることを・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ 科学教育のことが云われるからには、有益な科学の原理的な知識とともに、無私なよい観察者としての能力と、独創性を発揮するに足りるだけの周密、動的な推理の力とを二本の脚とする科学の精神が、あらゆる男女の心に培かわれてゆくことを願っていいので・・・ 宮本百合子 「科学の精神を」
・・・そして、そこで学んだ知識をもって、工場に働いている人たちに有益な講義をきかせて、彼等の進歩を扶けようとしました。マーニャが、天性の勤勉さ、緻密で、敏活な頭脳を、こうしてごく若いころから自分の功名のためだけに使おうなどとは思いもしなかった気質・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・方法で、一定の労働、その労働によるエネルギーの消耗、それに応じて一定の色彩に対する感覚的反応、または音楽音に対する感情の波動が、純粋に実験的なものとして記録されることができたら、どんなに興味あり、かつ有益なことであろう。 常識で考えても・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・ 女の生活と仕事をもつことの意味、有益さについて、ここまでは至極わかりやすいのではないでしょうか。結婚したら女房には稼がせたくないという考えをもっている若い男が今日もなお多勢います。そのために、自分の薄給では結婚もできずにいる不幸な青年・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・彼らにとって有害なるものも、その真の効用を解する他のものにとっては有益で有り得る。偶像再興が生活にとって意義あるはそのためである。二 文字通りの「偶像」について考えてみる。 使徒パウロは偶像を排するに火のごとき熱心をもっ・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
出典:青空文庫