・・・ 邪念なく労働に服する人、無心に地の上で遊んでいる子供、そして、其処に生きているには変りのない、人間も、小羊も、また鶏に至るまで、同じ霊魂を持つことによって、軽かな大空の下に呼吸することに於て変りのない、其等がみんな仲の好い友達であり、・・・ 小川未明 「民衆芸術の精神」
・・・「果して一致しないとならば、理想に従うよりも実際に服するのが僕の理想だというのです」「ただそれだけですか」と岡本は第二の杯を手にして唸るように言った。「だってねエ、理想は喰べられませんものを!」と言った上村の顔は兎のようであった・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・厳父の厳訓に服することは慈母の慈愛に甘えるのと同等にわれわれの生活の安寧を保証するために必要なことである。 人間の力で自然を克服せんとする努力が西洋における科学の発達を促した。何ゆえに東洋の文化国日本にどうしてそれと同じような科学が同じ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・負けた方が今日一日命令に服するんだぜ」「そんな事はきめやしない」「御早う……御呼びになりましたか」「うん呼んだ。ちょっと僕の着物を持って来てくれ。乾いてるだろうね」「ねえ」「それから腹がわるいんだから、粥を焚いて貰いたい・・・ 夏目漱石 「二百十日」
・・・今や地殻までが裁判長の神聖な裁断に服するのだ。」 二番目の判事が云いました。「実にペンネンネンネンネン・ネネム裁判長は超怪である。私はニイチャの哲学が恐らくは裁判長から暗示を受けているものであることを主張する。」 みんなが一度に・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・学校を出る、すぐ兵役の義務に服する、そのとき既に友達は八方に散るのである。三年ぐらいはたちまちその条件のうちで経過する。その三年間就職しつづけた人々と、新たにそれから後に就職する人との間にはおのずから隔たりがあるのが普通である。安倍さんの青・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・ 私は満腔の信頼とよろこびとをもってこの決議に服する。そして、自己批判によって一層高められたレーニン的党派性の理解に立って、この決議の実践、大衆化のために努力し、同時に、わが陣営内の最も害悪ある敵、日和見主義と、いよいよ正しく、譲歩する・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・この時代から女性は男子の権力に服するものとしての、社会的な在り方が根をおろしはじめ、歴史と共に極めて多様な形で変化しながら、殆んど今日まで、なお本質は継続して来ているのである。 藤原時代は、日本の文化史の中で、最も女性の文化が昂揚した時・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫